これからのハイエンドゲームノートPCは液冷になる!?　Lenovoの「Legion 9i」に新たな可能性を見た

Legion 9iを披露するClifford Chong氏（Gaming Category Manager，Lenovo Asia Pacific）

　2023年11月7日にLenovoが，シンガポールにて開催したゲーマー向け製品ブランド「Legion」のイベントでは，同社が「世界初の内蔵型液冷システム」を搭載するゲーマー向けノートPC「Lenovo Legion 9i」が披露された（関連記事）。ハイエンド市場向けの高スペックノートPCに液冷ユニットを組み込んだLegion 9iの見どころを見ていこう。

Legion 9i

ゲーマー向けノートPCとしては世界初の液冷ユニット内蔵型

　LenovoはLegion 9iを「世界初の内蔵型液冷システム搭載ゲーマー向けノートPC」であるとアピールしているが，ASUSTeK Computer（以下，ASUS）やマウスコンピューターも，液冷システムを搭載するゲーマー向けノートPCを展開していることを，覚えている読者もいるだろう。
　また，ノートPCに詳しい人であれば，2002年に日立製作所（以下，日立）が，液冷システムを内蔵したビジネス向けノートPCを発売したことを覚えているかもしれない（関連リンク）。つまりLegion 9iは，液冷システムを搭載した世界初のノートPCではないわけだ。

世界初の内蔵型液冷システムをアピールするスライド。液冷用のパイプとポンプの位置が分かる

　ただ，ASUSやマウスコンピューターの製品は，ポンプやラジエータといった重要部品を外付けユニットに組み込んでいるので，液冷システムすべてを内蔵しているわけではないし，日立のノートPCはすべてを内蔵していたが，ゲーマー向けノートPCではなかった。液冷システムを完全に内蔵したゲーマー向けノートPCとしては，Legion 9iが世界初というわけだ。

　前置きはさておき，デスクトップPC向けのCPUクーラーなどで名高いCooler Masterと共同開発したというLegion 9iの冷却システムは，空冷と液冷のハイブリッドとなっている。まず，GPUの温度が84℃未満までは，通常のゲーマー向けノートPCと同じくヒートパイプと複数のファンを組み合わせた空冷システムで冷やす。そのうえで，GPUの温度が上がってしきい値である84℃を超えると，液冷システムが動作してさらに強力に冷やすというわけだ。

Legion 9iの冷却システム。中央左側の銅色のヒートスプレッダの下にGPUがあり，その周囲を囲んでいるのが液冷のパイプ，中央上にある灰色の四角い部品がポンプだ

同じ向きにしたLegion 9iのマザーボード。中央左にあるプロセッサがGPUで，中央右がCPU，中央下側に見えるのはチップセットだ

　Legion 9iの液冷システムは，かなりコンパクトに作られており，今後，ハイエンド市場向けのゲーマー向けノートPCでは，同様の仕組みを採用する製品が増えていくかもしれない。

鉱石のような独特の天板

　冷却以外の部分にも目を向けよう。
　Legion 9iにおける見どころのひとつは，独特の模様を描いた天板だ。

Legion 9iの天板。鉱石の顕微鏡写真を思わせる独特の見た目だ

　この天板は，「フォージドカーボン」と呼ばれる炭素繊維複合材の一種で，炭素繊維と樹脂を素材に高い圧力をかけて焼き固めたものとのこと。高い強度と軽さを備えているので，スポーツカーのボディやスポーツ用品などに使われるようだが，それをノートPCのボディ素材に採用するというのは，極めて珍しい。
　また，この成型方法によって作られる板は，1枚1枚異なる模様を持つのだが，それを塗装で隠したりせず，あえてその模様を見せているのもポイントだ。ノートPCとしてはかなり珍しい見た目で，1台1台違うという点も所有欲をくすぐりそうである。

天板を別の角度から。本体の後端には横に伸びるカラーLEDのラインがある

　Legion 9iの外観におけるもうひとつのポイントは，ボディの薄さだ。16インチ級のボディ部分は20mmもない程度の薄さで，フットプリントの広さと相まって非常に薄く感じる。

Legion 9iの左右側面。左側面（上）にはSDカードスロットと3.5mmミニピンヘッドセット端子が，右側面（下）には後端側にUSB 3.2 Gen 1 Type-Aポートがある

　それでいて，インタフェース類はきちんと充実している。とくに背面側に集中配置された各種ポート類は，上から覗き込むだけでどこにどのポートがあるか分かるように，後端の上側にマークが描かれているのは，本製品に限らないLenovoのノートPC独自の工夫で，高く評価できるところだ。

背面のポート類は上からでも分かるようにマークが描かれている。写真左から有線LAN，USB 3.2 Gen 1 Type-A，Thunderbolt 4×2，HDMI 2.1出力，電源コネクタの並びだ

　スペックも確認しておこう。搭載CPUは，24コア32スレッド仕様のノートPC向けハイエンドCPUである「Core i9-13980HX」で，GPUはノートPC向け「GeForce RTX 4090 Laptop GPU」または「GeForce RTX 4080 Laptop GPU」と，ゲーマー向けノートPCとしては最高クラスのスペックを誇る。
　メインメモリ容量は32GB（16GB×2）で，最大容量は64GB（32GB×2）。内蔵ストレージ容量は2TBだが，容量1TBのPCI Express 4.0接続M.2 SSDを2枚搭載してRAID 0構成にすることで，総容量と読み書き速度を稼いでいる。ゲームのロード速度もかなり期待できるだろう。

　ディスプレイには，16インチサイズで解像度3200×2000ドット，アスペクト比16：10，Mini LEDバックライトで最大リフレッシュレート165Hzの液晶パネルを採用している。NVIDIA独自のディスプレイ同期技術「G-SYNC」に対応しているほか，最大輝度は1200nitに達しており，VESAのHDR関連規格「DisplayHDR 1000」認証も取得しているなど，ディスプレイも全部盛りと言っていいほど充実したスペックを有する。

ディスプレイは3200×2000ドットで，最大輝度1200nitとかなり高輝度なHDR映像を表示できる

キーボードは当然ながら100％アンチゴースティング，N-Keyロールオーバー対応だ。10キー付きな点は，好みが分かれそうではある

　本体重量は約2.5kg。決して軽いとは言えないが，Lenovoでは，「Legion 9iは性能対重量比に優れる」とアピールしている。

性能対重量比に優れる点をLenovoはアピールしている

　新しい機能と高いスペックを備えることもあり，Legion 9iは相応に高価な製品だ。米国での直販価格は3799ドル（税別，約56万6000円）からと，ハイエンド相応の価格となっている。国内販売は決まっていないが，安いモデルでも60万前後にはなりそうだ。
　ハイエンドのゲームノートPCを選ぶときに，液冷システムによる性能向上に期待してLegion 9iを選ぶという選択はありではなかろうか。

LenovoのLegion 9i製品情報ページ（英語）

Lenovoのゲーマー向け製品情報ページ