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プロドライバー直々の指導で,ラップタイムがみるみる縮む!? ブリヂストンが主催するeモータースポーツのレッスンに参加してみた
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印刷2023/12/13 08:00

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プロドライバー直々の指導で,ラップタイムがみるみる縮む!? ブリヂストンが主催するeモータースポーツのレッスンに参加してみた

 タイヤメーカーのブリヂストンは,eモータースポーツ体験型プログラム「Bridgestone eMotorsport Institute」を2023年7月から開催している。

 これは参加者がドライビングシミュレータを使い,プロドライバーのアドバイスを受けながら,ドライビングテクニックの向上を目指すもの。初心者から上級者まで10段階の指導が用意されており,習熟者にはリアル走行会への参加機会が優先的に与えられるという。

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 レースゲームはそれなりにプレイしているのに,ドライビングがうまくなったような気がしない筆者にはうってつけのプログラム。ブリヂストンがeモータースポーツのイベントを開催する狙いも気になるところなので,取材させてもらうことにした。

「Bridgestone eMotorsport Institute」公式サイト


 「Bridgestone eMotorsport Institute」の会場となるのは,東京都港区の南麻布にあるブリヂストングローバル研修センターの一室。そこにはACCESS社製のドライブシミュレータが6台設置されており(うち2台は子供用のセッティング),レッスンは最大4人の参加者に対して2人の講師が指導する形で行われる。

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 本来は1レッスンあたり70分だが,今回は30分ほどで軽く指導していただくことに。講師は,「グランツーリスモ ワールドシリーズ」での優勝経験があり,リアルレースでは今年SUPER GT(GT300クラス)とスーパーフォーミュラ・ライツに参戦したイゴール・大村・フラガ選手だ。4Gamerでは7月に同選手へのインタビュー記事を掲載している。

イゴール・大村・フラガ選手
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 グランツーリスモのグラフィックスは,もはや現実と見分けがつかないほどだが,車の挙動はどれだけ再現できているのか? グランツーリスモ ワールドシリーズでの優勝経験があり,実際のレースでも走るイゴール・大村・フラガ選手に聞く。

[2023/07/13 08:00]

 最初に運転免許やeモータースポーツ経験の有無などを記入してカルテを作成し,次にシートに座ってペダルやステアリングの位置を調整して,準備完了。

 まずは現時点での実力チェックということで,「Assetto Corsa」に収録されているヴァレルンガ・サーキットのショートコースを,フラガ選手のアドバイスなしで数周することになった。ドライブするのはトヨタのGT86だ。

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 筆者は普段レースゲームをゲームパッドでプレイしているので,恐る恐る走り出したが,3つの曲面ディスプレイを使った視野や,シートから伝わってくる振動などの迫力に,「これだけでも参加する価値あるなー」と感動しながら徐々にスピードアップ。5周走って,最速のラップタイムは1分6秒879だった。

 筆者がこのレッスンへ参加するにあたって,ぜひアドバイスをもらいたいと思っていたのが,低速コーナーの走り方だった。他車と同じようなスピードで入ってもうまく車が曲がってくれないように感じるし,コーナーの出口で外側に膨らみすぎてコースアウトすることが多い。
 今回もうまく走れていないように思ったので,それを切り出そうとしたところ,フラガ選手からいきなり核心を突くアドバイスがあった。

 それによると,筆者は「ブレーキングが全体的に強過ぎる」うえ,「ブレーキペダルを早めに,しかも急に離す」傾向があるという。

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 レースゲームをそれなりにプレイしている人なら,「ブレーキングで車の前方に荷重をかけて,タイヤを地面に食いつかせるようにすると曲がりやすい」といったことを聞いたことがあるかもしれない。
 筆者もそれは知っていて,ブレーキングして前方に荷重をかけて曲がっていたつもりだったのだが,実際にはブレーキペダルを離すタイミングが早く,コーナーリング時には荷重が抜けている状態だという。そのため,ステアリングを切っても車が曲がらないというわけだ。

 改善のためには,もっとコーナーの奥までブレーキをかけながら曲がる,ということが必要になるのだが,そうすると車が横滑りして,最悪スピンする不安が出てくる。筆者がブレーキを早めに離してしまう原因も,そこにあるような気がする。

 そのあたりを伝えると,フラガ選手は「タイヤのグリップ力の範囲内であれば,コーナーリングしながらブレーキを踏んでいても問題ありません」と説明してくれた。そのためには「ステアリングを切るに従って,ブレーキを徐々に緩めていく」という操作が必要になるという。

 ステアリングをそれほど切っていない状態であれば,ブレーキを強めに踏んでもスピンしづらい。だが,ステアリングを深く切っていれば,少し踏んだくらいでもタイヤの限界を超えて車が横に滑り出してしまう。なので,ステアリングの角度とブレーキの踏み方のバランスを取ると,前方への荷重を稼ぎつつ,横滑りせずに曲がれるというわけだ。

 説明されるとまったくその通りと感じるのだが,筆者は「ブレーキを徐々に緩める」という操作をしたことがほとんどなかったし,ステアリングとブレーキの連動を考えたこともなかったので,目から鱗が落ちる思いだった。

筆者のブレーキが雑なことは,データにもしっかりと表れていた。一番上がブレーキペダルのグラフで,白が筆者,赤がフラガ選手。フラガ選手のグラフがなだらかな下り坂になっているのに対し,筆者は崖のようだ
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 さっそく走行を再開して,指導の通りブレーキを徐々に緩めつつステアリングを切ってみると,確かに車がよく曲がってくれて,スムーズにコーナーリングできるように感じる。
 「これならかなりタイムを削れそう」とアクセルを踏み始めると,フラガ選手から「早いです!」という声が。その言葉通り,コーナーの出口で外側に大きく膨らみ,コースアウトしてしまった。出口で膨らむ癖の原因は,また別にあったようだ。

 アクセルを踏むタイミングは,フラガ選手の言葉を借りると「コーナーの出口が見えたら」なのだが,筆者の場合,ブレーキングが終わったらすぐアクセルを踏みたくなって,なかなか我慢できない。そして少しアクセルを踏んだだけでも,車は大きく膨らんでしまう。

 フラガ選手によると「ブレーキングが終わったらすぐアクセルを踏み込めるのが理想ですが,なかなかそうはいきません」とのことで,「どちらのペダルも踏まない時間があっても大丈夫です」とアドバイスしてくれた。そして,「アクセルを踏めば速く走れるわけではないですから」という,こちらの気持ちを見透かしたような言葉も。肝に銘じます……!

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 それからしばらく,コーナーのたびにフラガ選手から「我慢して我慢して……」「ここでアクセル!」と言葉をかけられながら周回することに。まるで飼い主から「待て!」と「よし!」をしつけられる犬のように走ると,みるみるうちにラップタイムが縮まり,1分3秒752のベストラップを記録したところでレッスンは終了となった。わずかな時間で,指導なしで走ったタイムから3秒以上も短縮できたことになる。

 フラガ選手からはほかにも,コーナーごとの特徴やブレーキングポイントの探し方など,さまざまなアドバイスがあり,どれも役に立ったのだが,一番驚いたのは,やはり筆者が苦手なところを即座に見抜いてアドバイスしてくれたことだ。荷重の使い方を理解できたことで,「Assetto Corsa」以外のゲームでも,低速コーナーが走りやすくなったと感じる。

 また,走行中「もっとアクセル踏んでも大丈夫」「いまのコーナーは良かったです!」といったように,すぐ反応をもらえるのも嬉しいところだった。1人のプレイでは,ラップタイムが縮まっても「今の周回はどこが良かったんだろうか……?」となってしまうことがあるが,ここならそういった迷いは発生しないだろう。

 有料のプログラムではあるが,前述のように,シミュレータでサーキットを走るだけでも楽しいし,フラガ選手のように,リアルレースでもその名を知られるドライバーたちと言葉を交わせる機会でもある。年内は12月16日と17日開催分の参加申し込みを受け付けており,2024年は現在のところ1月27日,2月10日,11日,24日,25日の開催が予定されているとのこと。プロのアドバイスをもらいたい人は参加を検討してほしい。

レッスン中,フラガ選手が見本走行をしてくれた。走り方を解説しながらにも関わらず,1分0秒台前半のラップタイムを安定して記録し,3周ほどでのベストタイムは1分0秒312
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 レッスンが終わった後,フラガ選手と共に当日の講師を務めていた武藤壮汰選手と,ブリヂストン モータースポーツ部門 グローバルモータースポーツサステナビリティ推進課長の山本 塁氏に加わってもらい,「Bridgestone eMotorsport Institute」のさらに詳しい話をうかがった。
 武藤選手はF1にも参戦するウィリアムズのeスポーツ部門に所属し,日本のスーパー耐久シリーズにも参戦するなど,フラガ選手と同じくリアルとバーチャル双方のレースを走るドライバーだ。

左から武藤選手,フラガ選手,山本氏
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4Gamer:
 レッスンに続いてお時間をいただき,ありがとうございます。これだけの環境でeモータースポーツを楽しめる機会はそうそうないと思いますし,指導も分かりやすくて,とても貴重な体験になりました。ブリヂストンがこのイベントを立ち上げた理由をまず聞かせてください。

山本 塁氏(以下,山本氏):
 一番大きな目的は,モータースポーツファン層の拡大です。1990年代あたりは多くの方に車やモータースポーツへ興味を持っていただいていましたが,そのような時代ではなくなっていて,趣味も多様化しています。そんな中で,少しでも多くの人にモータースポーツの良さを知っていただきたいという思いで始めました。

4Gamer:
 車離れはよく言われるところではありますが,やはりモータースポーツも同じような傾向はあるんですね。

山本氏:
 まず車を買うこと自体が大変ですし,販売されているスポーツカーの数も減っていますよね。サーキットはたいてい市街地から遠いところにあって,例えば都内から富士スピードウェイに行くには2時間かかりますし,ブレーキやタイヤといった消耗品にもお金が必要です。
 そういったところがハードルになっていると感じますので,まずは気軽に楽しんでもらう,楽しいねって思ってもらうことが最初だろうと。
 そこからリアルのレースに進んでも,そのままバーチャルで楽しんでいただいてもいいのですが,まずはそのスタートポイントに立っていただきたいという思いです。

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4Gamer:
 審査を通過しないと参加できない上級コースがあるなど,内容が本格的ですし,優秀な人にはリアル走行会への優先参加権も提供されるとのことで,プロドライバーの発掘や育成が目的かと思っていましたが……。

山本氏:
 いずれはそれも,という目的の1つではありますが,モータースポーツファンの拡大が第一ですね。もちろんタイヤメーカーですので,タイヤ販売につなげたい思いはあります。まずはモータースポーツファンの裾野を広げ,ご自身でも走ってみたい,タイヤも買ってみようかなという人を増やしていければと思っています。

4Gamer:
 最初に「Bridgestone eMotorsport Institute」のことを知ったとき,興味を覚えると同時に,失礼ながら「これでブリヂストンのタイヤを購入する人はどれだけいるだろうか」とも思ってしまったんです。
 損益だけを考えてしまえば厳しい面があるのかもしれませんが,それでもGOサインが出たのは,会社のモータースポーツに対する考え方があってのことでしょうか。

山本氏:
 そうですね。我々にはF1やMotoGPにタイヤを供給していた時代もあるのですが,日本では2018年にスーパーフォーミュラ,2022年にカート用のタイヤ供給を終了しています。
 そのため,「ブリヂストンはモータースポーツをやらないんじゃないか」などと言われることもありましたが,そうではありません。モータースポーツには力を入れたいと考えています。
 「これをやったから明日タイヤの売り上げが伸びる」というものではありませんが,やっぱり裾野を広げないと先細ってしまう,という危機感はあると思います。

4Gamer:
 ファン層の拡大という意味で,ドライビングシミュレータ,またはゲームは可能性がありそうでしょうか。

山本氏:
 はい。やっぱり安全で怪我の心配がありませんし,車を買うより遙かに低いコストで,免許がない方や小さなお子さんでも始められます。そういったいろいろなメリットがありますので,非常に有望だと思っています。

4Gamer:
 子供用にセッティングしたシミュレータも用意されていましたし,お子さんの参加者も多いようですね。

山本氏:
 はい。ですが今のところ,お子さんの参加者はやっぱりお父さんの影響を受けて,というケースが多いようですので,そうじゃない子にも今後声をかけていきたいです。
 レースに限らず,eスポーツやゲームのコミュニティはすごくしっかりしていますし,かなり多くの人がいらっしゃいますので,そこにモータースポーツの魅力を伝えられればと思っています。

4Gamer:
 参加されるのはどんな人が多いのでしょうか。

イゴール・大村・フラガ選手(以下,フラガ選手):
 実車でサーキットを走ってみたい人や,以前走っていたけど最近はご無沙汰の人が多いです。参加の頻度は人によってさまざまですが,「グランツーリスモ」などをプレイしているお子さんは,レッスンで分かった課題点をしっかり直してから再び来る印象があります。ただ,みなさんに共通して「面白い」と言っていただけるので,そこは嬉しいですね。

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4Gamer:
 リピーターが多いんですね。

山本氏:
 まだ始めて数か月なので,リピーターと呼べるほどなのかは分かりませんが,複数回参加されている方はいらっしゃいます。

武藤壮汰選手(以下,武藤選手):
 実際にサーキットを走った経験がある方は,効率よく走れることをメリットに挙げることが多いですね。
 実車で走るときは基本1人なので,課題を見つけることも難しいんですが,ここなら同じ条件で周回しながらアドバイスをもらって,自分の実力をチェックしたり,課題を見つけたりできるので。

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フラガ選手:
 実車だとタイヤの摩耗やブレーキのフェードといった要因があるので条件が一定しませんし,レース用ではない市販車で走行する場合は,2〜3周したらクーリングが必要になるので,連続走行は難しいんです。
 ここならずっと同じ条件で走れますし,教える側もドライビングのどこがいいのか,どこがまずいのかを指摘しやすいです。

4Gamer:
 なるほど,そのあたりはドライブシミュレータならではのメリットになりそうですね。講習会でのアドバイスは,リアルとバーチャルのどちらでも通じるものということでいいでしょうか。

フラガ選手:
 そうです。もし参加者の方から「このゲームタイトルで速く走りたい」といった要望があれば,そのタイトルだけで使えるテクニックを教えることもできますが,基本的にはリアルとバーチャルやタイトルの違いに関係なく使えるものです。

4Gamer:
 本日使用したシミュレータは,シートの動きで車のスライドなどの挙動を再現していましたが,あれは実車での動きに近くて,ドライビングに役立てることができるものなのでしょうか。

油圧シリンダーによってシートが動くが,シート自体が体を包むような形状のバケットシートなので,体が振られてしまうようなことはなかった
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武藤選手:
 ヨーイング(水平面での回転)は,車の後部の動きが分かりやすくなって,実際に役立つこともあります。視覚やステアリングのフォースフィードバックといったところからも車の挙動を感じ取ることはできますが,それにはかなり集中する必要があるので,それより楽になるといった感じですね。

フラガ選手:
 長年やっている人であれば,シートが動く動かないに関係なく,同じ走りができると思いますが,一般の方になると,やっぱりシートの動きがあったほうが,ドライブしやすいと思います。

山本氏:
 実際の車の挙動とは違うところもあるので,個人によりますが,中には酔ってしまう方もいて,そういう方はシートの動きはいらないかもしれません。ただ,基本的には情報が増えてドライブしやすくなるメリットのほうが大きいと思います。私自身も素人として,やっぱりお尻が動いた方が分かりやすいですね。

4Gamer:
 以前フラガ選手にインタビューしたとき,「グランツーリスモ」は現実にかなり近づいているけれど,タイヤについては実際のレースでも謎の部分が多いので,今後さらに発展の余地がありそうだという話を聞きました。
 実際にゲームなどに実装するといった話とは別にして,ブリヂストンではタイヤのシミュレーションについて,どのような研究されているのか,教えてください。

山本氏:
 裏ではいろいろな研究をやっていまして,例えば銘柄による挙動の違いといったことも再現できています。カーメーカーさんがシミュレータを積極的に利用するようになった影響もあって,タイヤの表現もだんだんリアルになってきていると思います。
 ただ,再現にこだわればこだわるほど,まず機器を含めた値段が上がってきてしまいます。また,ここにいるフラガ選手や武藤選手のように1周コンマ1秒の差で安定して回れるような方であればタイヤの違いも感じられますが,おそらく一般の方には難しいだろうと思います。ですので,細かなタイヤの差の再現よりも,まずはシミュレータの面白さを広げることを優先しています。

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4Gamer:
 フラガ選手と武藤選手はリアルとバーチャルのどちらも走るドライバーですが,ゲームやシミュレーターからレースの世界に入ったドライバーは,例えばカート出身のドライバーと違うところがあったりするのでしょうか。

武藤選手:
 大まかに言うと,シミュレータやゲーム出身のドライバーは,やはり車の動きを目で感じていると思います。逆に実車出身のドライバーは,視覚に加えてシートから伝わってくる情報で判断する人が多いようです。
 あとは,シミュレータ出身のドライバーは,細かいところまで考えながらドライビングしていますね。先程も話に出ましたが,同じ条件で何周もできるので,いろいろなところでタイムを削っていくような。
 ただ,実際のレースでは,細かいところまで見えているから速くなるわけでもないんです。

4Gamer:
 それはなぜでしょうか。

フラガ選手:
 実際のレースでは,いろいろなものが変化しますから。同じ車でも個体差はありますし,気象条件も一定ではありません。また,走行時間も限られているので,多くの要素をチェックするわけにはいかなくて,その中から何を選択するかが重要になります。

武藤選手:
 なので,実車で普通に走るだけならシミュレータの経験だけでもそれほど大きな支障はないと思うのですが,勝つためには,やはり実車でのレース経験が重要になります。

画像集 No.012のサムネイル画像 / プロドライバー直々の指導で,ラップタイムがみるみる縮む!? ブリヂストンが主催するeモータースポーツのレッスンに参加してみた

4Gamer:
 見えているものが多い分,そこから何を選ぶかも難しくなりそうですね。現状だと,やっぱりカートから入ってプロのドライバーになるというコースが主流だとは思いますが,モータースポーツの入口がシミュレータになる時代は来るでしょうか。

武藤選手:
 来ると思います。僕自身はカートから入って,金銭面などの事情からeモータースポーツを経験した後にまたリアルに戻ってきたんですが,やはりシミュレータはより多くの人が体験できるものなので。
 好きなだけ練習できるので,そこから得られるものは多いですし,現在は実車でしか得られないものも,シミュレータの精度が高まることで少なくなっていくと思います。もちろんフィジカルや勝負勘といった,シミュレータだけでは得にくいものもありますが,それもカートだけで身に付くわけではありませんし。

フラガ選手:
 カートもモータースポーツの入口であり続けるとは思いますが,eモータースポーツの世界大会で上位に入るような選手は,どんどん実車のほうに入ってきてほしいですね。チャンスを与えられたら,みんながびっくりするくらいのドライバーになる人がいると思います。
 先程話したように,実車は実車の経験が必要になるので,そこをガイドしてくれる人は必要になりますが,ぜひトライしてほしいですね。

4Gamer:
 年内は12月16日,17日の開催が予定されていますが,その後の展開について,お話しいただける範囲で聞かせてください。

山本氏:
 まずは基本的なところから始めたので,今後もっと楽しんでいただけるようなものを増やしていきたいですね。
 例えば3回パッケージとか5回パッケージといった,料金的なものもありますし,イベント的なものもやってみたいと思っていますので,そういった発展をちょっとご期待いただければと思っています。

4Gamer:
 フラガ選手と武藤選手も,参加を考えている人へメッセージをいただければ。

フラガ選手:
 実車と限りなく近いものを体験できるだけではなくて,車の動き方やテクニックを学んで,それがタイムに出てくるので,そういった「上達感」が楽しいパッケージです。その楽しさが,車を持っていない人や,サーキットになかなか足を運べない人などにも広がっていくと嬉しいです。

武藤選手:
 車の挙動も現実にすごく近いですし,実際に走って,ミスしつつも課題を見つけて,それを克服とか改善してタイムを削れたときの喜びも実車と同じです。天候にも左右されず,いい環境で楽しく運転の楽しさを感じてほしいです。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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「Bridgestone eMotorsport Institute」公式サイト

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