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[TGS 2018]墨絵のようなアートワークが目を惹く「Tale of Ronin」を紹介。黒澤 明と「バガボンド」「シグルイ」好きのアメリカ人が描く無常の世界
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印刷2018/09/23 23:19

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[TGS 2018]墨絵のようなアートワークが目を惹く「Tale of Ronin」を紹介。黒澤 明と「バガボンド」「シグルイ」好きのアメリカ人が描く無常の世界

 2018年9月20日から23日まで,千葉県・幕張メッセで開催された東京ゲームショウ2018のインディーゲームコーナーでは,世界各国の個性的なゲームが展示されていた。
 中でも異彩を放っていたのが,墨絵のようなアートワークが魅力のサムライゲーム「Tale of Ronin(浪人の物語)」だ。デベロッパのDead Mageはアメリカのソフトハウスだというが,なぜこのような日本的なゲームを作るに至ったのだろうか。プレイレポートとインタビューをお届けしよう。

試遊した人にはポストカードがプレゼントされていた
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「Tale of Ronin」公式サイト



7人の主人公が流転し続ける「セカイ・システム」


 会場では,Dead MageのスタジオリードであるAmir H. Fassihi氏からレクチャーを受けつつテストプレイできた。Fassihi氏がとくに力を入れて説明していたのが,本作独自の要素である「セカイ・システム」だ。

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 Tale of Roninは,7人の浪人達を主人公としている。ゲームを始めると7人のうちの1人がランダムで選ばれ,世界を放浪するうちにさまざまな事件に出くわす。戦いの末に主人公が死亡すると,普通のゲームならゲームオーバーとなって最初からやり直しになるのだが,本作では別の浪人が主人公となってプレイが続いていく。
 例えばNPCを殺したり,村を焼いたりというように世界に変化を加えると,これが次の主人公にも影響を及ぼす,というように。これがセカイ・システムだ。
 すべての主人公が死ぬと世界はリセットされ,新たなプレイを始められるが,新世界ではキャラクターやイベントの配置がランダムに変化するので,前回のプレイと同じものにはならないのだとか。つまり,タイムループものとローグライクが組み合わさったようなシステム,と考えるといいかもしれない。

主人公である浪人達。全部で7人おり,誰かが死んでも別の主人公で同じ世界を旅できる
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 システムとしては複雑だが,ゲームの操作は分かりやすい。
 町の外へ出ると浪人は自動で歩き続け,しばらくするとイベントに遭遇する。そこでプレイヤーは,どう対応するかを選ぶ。ただ,これだけなのだ。例えば物売りに出会った場合は,「物を買う」「盗む」「無視する」という,善悪入り混じった選択肢が出る。NPCの中には仲間にできる人物もいて,戦闘時には主人公と一緒に戦ってくれる。ほかの主人公と出会うこともあったが,選んだ選択肢がまずかったのか,今回の試遊では残念ながら仲間にはならなかった。

町の外へ出ると,浪人は自動で歩いていく
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NPCへの対応はプレイヤーが決める。このNPCは刀を売ってくれるのだが,奪い取ることも可能だ
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ゲーム中にほかの主人公と出会うことも。「金をやるから付いてこい」的な選択肢を選んでみたが,残念ながら仲間にはならなかった
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 野盗や荒くれ者に出会ったり,会話の際に暴力的な選択肢を選んだりすると戦闘に突入する。墨絵のようなアートワークで描かれた大きなキャラクターが刀で斬り合い,一撃が入ると赤い血が飛び散る。黒と赤のコントラストが美しい。

精神力や集中力が低下すると,相手の刀を受けやすくなる。三度斬られると敗北だ
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 戦闘はいわゆるコマンド選択式なのだが,選ぶのは「構え」「1撃目に使う技」「2撃目に使う技」という風変わりなものだ。
 通常使える構えには「中段」「下段」があり,どちらを選ぶかによって1撃目に使える技の種類が変化する。そして,1撃目の技をどれにしたかによって,2撃目に使える技も変わってくる。さらに特定のルートで技をつないでいくと,普段は使えない「上段」「八相」と言った特殊な構えが選べるようになったり,そこからの派生技が使えるようなこともあった。いったいどんなルートで派生するのか,色々試してみたくなるシステムだ。

画面中央下には表されているのが,「構え」と「1撃目に使う技」「2撃目に使う技だ
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特定ルートで技をつなぐと,普段は使えない上段の構えが発動。「さまざまなルートへ分岐する,3D格闘ゲームのコンビネーション技のようなもの」と言えば,(一部の人には)分かりやすいだろうか
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 いわゆるHPのようなものはなく,先に斬撃を3回ヒットさせた側の勝利になる。実にシンプルだが,途中でセーブなどはできないので,戦いは自然にスリリングなものに。試遊ではよく分からないままに死ぬことも多かったのだが,「折角仲間もでき,いい武器も手に入ったのに……」などと結構悔しい思いをすることになった。この辺りは,ローグライク的な面白さと言えるのではないだろうか。

NPCが仲間にいる場合は,このような集団戦が発生する
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“死の恐怖”“孤独”“自由”“人生の意味”。4つの恐怖に向き合う浪人の生き様を描く


 墨絵のようなアートワークと緊張感溢れるバトル,そしてセーブができないシステムが相まって,一種の無常観を生み出しているTale of Ronin。この個性的な作品について,Dead MageのスタジオリードであるAmir H Fassihi氏に話をきいてみた。

Dead MageのスタジオリードであるAmir H Fassihi氏
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4Gamer:
 まずDead Mageという会社について教えてください。

Amir H Fassihi氏(以下,Fassihi氏):
 Dead Mageは,アメリカのテキサス州にあるソフトハウスです。Tale of Roninではコアメンバー5人で開発を進めています。

4Gamer:
 Tale of Roninを実際にプレイして,時代劇のような雰囲気を強く感じました。アメリカのソフトハウスが,なぜ日本のサムライを題材にしたゲームを作ろうと思い立ったのでしょうか。

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Fassihi氏:
 私は中学生の頃,3年ほど日本に住んでいたことがあるんです。そこで日本の文化や黒澤 明作品,チャンバラ映画などに興味を持つようになりました。Dead Mageには私のほかにも黒澤映画のファンがいて,彼の映画のテイストや,伝えようとしているテーマをリスペクトし,Tale of Roninにも取り入れていきたいと考えているんです。

4Gamer:
 言われてみれば「黒澤村」なる場所が出てきたり,NPCのセリフにも「用心棒」を思わせるものがありました。墨絵風のアートワークもとても印象的ですね。

Fassihi氏:
 ありがとうございます。アーティストは3人いて,日本の墨絵を学んできた者もいます。ネットを使って資料を集めることもあるんですが,それだと中国の墨絵も引っかかってしまうのが難点ですね。同じ墨絵でも,日本と中国では違いますから。Tale of Roninでは,テイストを日本の墨絵に統一したいのです。

4Gamer:
 ゲームの根幹である,セカイ・システムについて教えてください。

Fassihi氏:
 セカイ・システムは,いわゆるローグライクゲームを元に,逆転の発想を行うことで生まれました。普通のローグライクゲームでは,主人公が死ぬと世界のすべてが失われてしまいます。ニューゲームを選ぶと,再生成された世界を同じ主人公が冒険していきますよね。
 しかしセカイ・システムは,7人の主人公の誰かが死んでも,別の主人公が同じ世界を旅していきます。つまり,主人公は変わっても世界は同じで,前の主人公がやったことの影響が残り続けるんです。

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4Gamer:
 7人の主人公達が全滅するまで,世界が継続し続ける?

Fassihi氏:
 そうです。全滅すると,その世界での旅は終わりを迎えます。そして,新たにプレイするときに,セカイ・システムが新たな世界を作り出すんです。

4Gamer:
 主人公達は,世界に対してどんな影響を与えられるのでしょうか。

Fassihi氏:
 NPCと遭遇したときに,どんな選択肢を選ぶかで展開が変わります。殺してしまうこともできますが,後で悪い影響があるかもしれない。またセカイ・システムのNPCは,プレイヤーのことを記憶しています。再会することがあったら,以前と反応が変わったりもする。

4Gamer:
 オープンワールド的な自由度がある,ということでしょうか。

Fassihi氏:
 オープンワールドは広大な世界を使って自由度を表現します。しかし,私達にはそんな世界を作るリソースはないので,“広さ”のかわりに“深さ”を持った世界と,物語を生み出そうと考えました。それがセカイ・システムなのです。

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4Gamer:
 Tale of Roninを制作するうえで,大切にしていることはなんでしょうか。

Fassihi氏:
 コアになるのは“浪人であること”ですね。主人公を身分のある侍にしなかったのは,人間的なキャラクターを描きたかったからです。浪人であれば,“死の恐怖”“孤独”“自由”“人生の意味”といったさまざまな問題が扱いやすくなります。その姿から,人間的な味わいが感じられるのです。

4Gamer:
 “死の恐怖”“孤独”“自由”“人生の意味”といったキーワードについて,それぞれ詳しく教えてください。

Fassihi氏:
 まずは“死の恐怖”ですね。サムライは死を恐れません。大名の元にいれば大義に寄り添っていられるので,恐怖を感じずに済みます。しかし,浪人になればそうした大義もなくなり,普通の人のように死を恐れることになる。
 大名の元を離れると同僚や味方を失いますから,“孤独”に直面します。大名の命令に従っていたサムライも,浪人になれば自分の道を自分で決めなければならない。いきなり道が広がってしまって,どうすればいいのか分からない。これは“自由”の問題です。

4Gamer:
 なるほど。

Fassihi氏:
 そして“人生の意味”。これはそのままですね。侍は大名に仕えることに人生の意味を見出しますが,浪人は自分が生きることの意味を自分で探さなければならない。こうした問題は私自身が思い悩んでいるものであり,現代人にも通じる普遍的なものです。
 ゲームは日常の不安を忘れるために遊ぶこともできますが,Tale of Roninでは,こうした問題を考える機会を与えられたらと思っているんです。黒澤も「七人の侍」や「用心棒」でこうしたテーマを描いていますからね。

4Gamer:
 やはり,黒澤映画の影響が大きいんですね。

Fassihi氏:
 ええ。「用心棒」の冒頭で,主人公の浪人・桑畑三十郎が,棒を空に投げ上げて,落ちた際に倒れた方向で行く先を決める……というシーンがありますよね。それを見て,“これこそ浪人だ”と思ったんです。

4Gamer:
 Tale of Roninを作るにあたって,ほかに影響を受けた映画や漫画,ゲームはあるのでしょうか。

Fassihi氏:
 設定的には「バガボンド」「シグルイ」といった漫画,チャンバラ映画からも影響を受けました。ゲームなら,「FTL: Faster Than Light」「Darkest Dungeon」「The Banner Saga」ですね。

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4Gamer:
 戦闘システムの見所を教えてください。

Fassihi氏:
 戦闘システムについては,まずボードゲームを制作して,そこからデジタルに落とし込みました。ディープな戦闘システムを作りたかったので,構えや技の一つ一つに戦略的な要素を盛り込んでいます。
 残りのHPを比べ合うようなシステムは刀の戦いにふさわしくないと考えて,精神力や集中力の要素も取り入れました。これらが消耗すると防御が甘くなり,敵の刀に斬られやすくなってしまいます。

4Gamer:
 精神力や集中力が重要になるという考え方も,ある意味日本的ですね。ちなみに,ゲームの配信日はいつ頃を予定されていますか。

Fassihi氏:
 できれば,2019年内に出したいですね。

4Gamer:
 楽しみにしています。最後に,日本のゲーマーに何かメッセージをいただけますか。

Fassihi氏:
 Tale of Roninを発表するとき,日本のゲーマーの皆さんがどう思うか不安でした。しかし,良いレスポンスがもらえてとても嬉しいです。私は日本の文化が世界で一番面白いと思っているので,このゲームを通じて伝統的な日本文化の面白さをお見せできればと思っています。

4Gamer:
 ありがとうございました。

「Tale of Ronin」公式サイト

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