連載
結のほえほえゲーム演説:第85回「平成の子供達はどうしてドットの世界に夢を見たか」
ごきげんよう。女優・タレントとして活動しております,結です。
いよいよ平成が終わりますねぇ。平成において,ゲームの進化はめざましいものでした。グラフィックス表現の進歩,海外への躍進,スマートフォンへの進出……。昭和61年生まれの私は,この進化を肌で感じながら,ゲームと共に生きてきました。
私とゲームの出会いは,物心ついてすぐの頃。父親が買ってきたファミリーコンピュータ用ソフトの「スパルタンX」「ピンボール」を,ヘタクソながら一生懸命プレイしていました。そして幼稚園時代,「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」と運命の出会いを果たします。ドット表現の奥に,広大な世界とヒューマンドラマを感じ,何よりも夢中になりました。
すっかり冒険の魅力にとりつかれた私は,歯医者に行くにも攻略本を持ち歩き,幼稚園ではスライムのイラストを描くように……。周囲の女の子がセーラームーンに憧れるなか,「ダイの大冒険」のマァムになりたかったのを覚えています。アクション,格闘,アドベンチャー,パズル……と多ジャンルのゲームを遊んでいましたが,とくにRPGと名のつくものに目がなく,片っ端から遊びました。「ファイナルファンタジーVI」「スーパーマリオRPG」「クロノ・トリガー」など,たくさんの名作との出会いは,私の心の血肉となっています。
ドット表現や,短いテキストの中に,語られている以上のドラマを感じること。それは,“行間を読む”ことの美しさ,楽しさに似ているような気がします。
「ストリートファイター」や「ギルティギア」で,キャラクターのプロフィールを暗記し,彼らの日常生活や心情を想像したり,「かまいたちの夜」や「ダブルキャスト」をプレイした夜は,一人でトイレに行くことが怖くて仕方がなく,早足になったりしていました。
中学高校と女子校に通っていた私は「ときめきメモリアル」で,いろんなデートを想像したりもしましたね。私の人生において絶対に手に入らない“学生デート”とは,どんなに楽しいものなのだろう……と。
「どこでもいっしょ」のトロと別れるときにはギャンギャンに号泣し,翌日学校を休んだこともあります。まだ身近な人間が亡くなったこともなく,恋人や友達と別れたこともなかった私にとって,あれは初めて経験した別れでした。
繊細なグラフィックス表現が可能になった今,想像する楽しみが奪われてしまったようで,寂しさを感じることがないといえば嘘になります。だからこそ“想像する楽しみ”を大切に作っているゲームに出会えたときは,たまらなく嬉しいのです。
平成を生きてきた子供は,誰もが一度は言われたことがあるでしょう。「ゲームばっかりやってないで勉強しなさい!」「ゲームなんて将来役に立たないよ!」と。かくいう私も受験生の頃はゲーム禁止令が出たなぁ。塾帰りにこっそりゲーセンで「ポップンミュージック」をやっていたけど……。
令和を生きる子供に同じことを言ったらどうなるのでしょう。「プロゲーマーになるもん!」「YouTuberになってゲーム配信するもん!」って言われるのかしら。少なくとも「役に立たない」と大声で一蹴することは難しい気がします。
「好きなことで,生きていく」
某広告で話題になったこのキャッチコピー。実は私,あまり好きではありません。はたから見たら,私の生き方も「好きなことで,生きていく」を地でいっているように見えるかもしれません。でも,私は“好きなことだけをやる”と“好きなことをやるために,好きじゃないことも我慢する”では,大きな違いがあると思うのです。私が,だめ,と言われつつも許される範囲で好きなものを満喫していたこと。これはかけがえのない経験だったはず。だから大好きなゲームにまつわる仕事において,たとえ意地悪な目に遭ったとしても,絶対に屈しない,めげないという決意を持って生きていけます。
ゲームクリエーターは,限られた容量の中に作りたいものを詰めこんだことでしょう。子供達は,ゲームが必ずしも“良し”とされない時代に,遊びたいゲームを遊ぶために必死でした。
制限の中で,想像力をフル回転する楽しさよ。
年寄りくさいかな。分かってもらえないかな。意味分からないかな。でもね。
平成の子供達は,ドットの世界に無限の物語を見ていたのです。
最近プレイしているゲーム(2019/4/20)
Nintendo Switch:「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」
Nintendo Switch:「スプラトゥーン2」
Nintendo Switch:「星のカービィ 夢の泉の物語」
iOS:「アークザラッド R」
iOS:「ロマンシング サガ リ・ユニバース」
iOS:「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」
■■結(女優・タレント)■■
女優・タレントとしてフリーランスで活動中。国内映画祭にて主演女優賞を多数受賞。幼少期からのゲーム好きが高じ,数多くのゲーム番組でMCを務め,イトキチ(糸吉)の愛称で親しまれている。
公式サイト:http://yui-monogatari.com/
公式Twitter:https://twitter.com/xxxjyururixxx
ニコニコチャンネル「結チャンネル」:http://ch.nicovideo.jp/yuichannel
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