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今あるHDMIケーブルは「HDMI 2.1」で使えない? 新規格における違いをアピールするHDMIライセンス団体
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印刷2019/01/19 00:00

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今あるHDMIケーブルは「HDMI 2.1」で使えない? 新規格における違いをアピールするHDMIライセンス団体

CES 2019の主会場に広めのスペースを取っていたHDMI LAブース
画像集 No.002のサムネイル画像 / 今あるHDMIケーブルは「HDMI 2.1」で使えない? 新規格における違いをアピールするHDMIライセンス団体
 HDMI規格のライセンスやマーケティングを担当するHDMI Licensing Administrator(以下,HDMI LA)は,CES 2019の主会場に比較的広いスペースのブースを展開し,例年とはかなり異なる展示を行っていた。というのも,HDMIの最新仕様となる「HDMI Version 2.1」(関連記事以下 HDMI 2.1)が,いよいよ本格的に始動するということで,アピールに力を入れていたからだ。
 HDMI 2.1の最新事情と合わせて,ブースにおける展示の概要をレポートしよう。


2019年はHDMI 2.1元年?


HDMI LAブースの外壁には,HDMI 2.1のアピールポイントを記したパネルが並んでいた
画像集 No.003のサムネイル画像 / 今あるHDMIケーブルは「HDMI 2.1」で使えない? 新規格における違いをアピールするHDMIライセンス団体
 HDMI LAブースの主役であったHDMI 2.1は,来たる8K映像時代を見すえて作られた最新のHDMI規格である。HDMIの規格化団体であるHDMIフォーラムが,仕様を確定させたのは2017年11月だが,同フォーラムとしては,2019年を「HDMI 2.1元年」という心持ちで捉えているようで,それくらいHDMI LAブースの展示には力が入っていた。

新4K8K衛星放送の8Kチャンネルに対応するチューナーを搭載した80インチテレビ「8T-C80AX1」。この写真は国内で撮影したものだ
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 なぜ,2019年がHDMI 2.1元年なのかと言えば,切っ掛けの1つは2018年12月に日本でスタートした「新4K8K衛星放送」だ。たとえばシャープは,2018年秋に,新4K8K衛星放送に対応するテレビチューナーを内蔵する8K液晶テレビ「AQUOS 8K」の「AX1」シリーズを発売したのだが,2019年中にはHDMI 2.1対応のファームウェアアップデートが予定されているそうだ。

新4K8K衛星放送対応チューナーは4Kの受像まで対応した製品(左)と,8Kチャンネルの受像にも対応する製品がある。4Kまでしか対応しないチューナーでは,8K放送を受像できない。4K対応チューナーは各社から3万円前後で登場しているが,8K対応チューナーはシャープの「8S-C00AW」(右)だけで,価格も約24万円前後とかなり高価だ
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CES 2019でソニーは,8Kテレビ「Z9G」シリーズを発表した。最大サイズは98インチで,HDMI 2.1対応とのこと。ただし価格は1000万円近くなるという話だ
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 それに続いてCES 2019では,ソニーやSamsung Electronics(以下,Samsung),LG Electronicsといった世界的な大手テレビメーカーはもちろん,新興の中国系テレビメーカーまでが,HDMI 2.1対応を謳った8Kテレビを発表してきたのだ。それに加えて,8Kに関連する製品やソリューションを展開する企業が「8K Association」という新団体の設立をCES 2019で発表するといった具合で,新4K8K衛星放送開始をきっかけとして,業界全体が8Kに向けて盛り上がりを見せている。

テレビ大手のSamsung(左)はもちろんのこと,中国の家電大手Hisense(中央)や,中国の新興メーカーSkyworth(右)も8Kテレビへの取り組みをアピールしていた
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 裏を返すと,これまでは規格として存在するだけでしかなかったHDMI 2.1が,実際に製品で動作するようになったのが2019年というわけだ。HDMI 2.1対応インタフェースチップ(※トランスミッターやレシーバー)の量産出荷が始まったのが2019年と言い換えてもいいだろう。
 ちなみに,国内ではソシオネクストがHDMI 2.1対応インタフェースIPを開発しており,シャープのAXシリーズに採用されている。

 ただ,このHDMI 2.1,実はゲーマーを含む一般消費者にとっては,厄介な問題がある。HDMI 2.1では48Gbpsという超広帯域幅のデータ伝送を行うのだが,既存のHDMIケーブルでは伝送できない場合が出てくるという。簡単に言えば,今持っているHDMIケーブルでは,HDMI 2.1の映像を正常に伝送できないかもしれないのだ。


HDMIケーブルにはカテゴリ規定がある


 伝送帯域幅という視点でHDMI規格を見ていくと,これまでに2回のバージョンアップが行われてきた。具体的には,以下のようになる。

  • HDMI 1.2以前:4.95Gbps
  • HDMI 1.3〜1.4:10.2Gbps
  • HDMI 2.0:18Gbps

 HDMI 1.2以前のケーブルは,HDMI 1.3〜1.4でも普通に使えてしまうことが多い。HDMI 1.2向けケーブルの多くが,結果的に10.2Gbpsにも対応できる電気的特性を備えていたということだろう。
 しかし,HDMI 1.x向けのケーブルは,HDMI 2.0における18Gbps伝送には対応できないケースが多い。3m未満の短いケーブルであれば使えることも多いのだが,5m以上になると途端に使えなくなったりする。18Gbpsもの高速信号を伝送するには電気的損失が大きくて,エラーが出てしまうのだ。この場合,画面がまったく映らなかったり,画面が点滅したりするという現象に見舞われる。

 「HDMIで伝送するデータは,「0」か「1」のデジタルデータだから,電気的損失には強いのではないか」と思った人もいるだろうが,18Gbpsもの高速伝送になると,端子接点の材質や加工品質,ノイズ対策がしっかりしていないと,伝送先で0か1かの判別すら難しくなってしまうというわけだ。
 この問題に対するゲーマー側ができる対策は,HDMI 2.0の18Gbps伝送に対応することを明言したケーブルを購入することである。つまり,HDMIケーブルの品質認証プログラム「HDMI Premium Certified」の認証を受けた「Premium HDMIケーブル」(またはPremium High Speed HDMIケーブル)を選べばいい。

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 PCやゲーム機をディスプレイやテレビにつなぐ規格でおなじみのHDMI。このHDMI規格を策定する「HDMI Licensing Administrator」が,COMPUTEX TAIPEI 2018に小さなブースを出展していた。そのブースで,最新の規格であるHDMI 2.1とXbox Oneの関係や,HDMI認証プログラムの最新事情を聞けたので,簡単にレポートしよう。

[2018/06/16 00:00]

 HDMI規格では,これまでに定義した各バージョンの伝送に対応したケーブルに対して,カテゴリー番号と名称を定めている。残念ながら,こうした名称の存在は消費者に知られていないので,で簡単に整理しておこう。

表 HDMIのバージョンと対応するケーブルの名称,およびカテゴリー番号
HDMIバージョン 伝送速度 名称 カテゴリー番号
HDMI 1.2以前 4.95Gbps Standard HDMIケーブル 1
HDMI 1.3〜1.4 10.2Gbps High Speed HDMIケーブル 2
HDMI 2.0 18Gbps Premium High Speed HDMIケーブル
またはPremium HDMIケーブル
2

左からStandard HDMIケーブル,High Speed HDMIケーブル,Premium HDMIケーブルの認証ロゴマーク
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 少しややこしいのは,HDMI 1.3〜1.4対応のHigh Speed HDMIケーブルと,HDMI 2.0対応のPremium HDMIケーブルが,ともにカテゴリー2に分類されている点だろうか。HDMI 2.0まではこの程度で済むのだが,これがHDMI 2.1になると,さらに複雑化する。

 HDMI 2.1になっても,接続端子の形状やピン数はHDMI 2.0までと同じだ。しかし,各ピンでどの信号を伝送するかというピンアサインが変わり,さらにEMI(Electro Magnetic Interference,電磁気妨害)特性や,EMS(Electro Magnetic Susceptibility,電磁気妨害感受)特性も変わった。ようするに,HDMI 2.1とHDMI 2.0は,端子の物理デザインこそ同じだが,伝送する信号はまったく別ものであり,インタフェースチップがどのHDMIバージョンで接続するかを判断して,HDMI 2.0以前との互換性維持を図る必要があるのだ。

 こうした理由から,HDMI 2.1の48Gbps伝送に対応したHDMIケーブルは「カテゴリー3」に分類されることとなり,「Ultra High Speed HDMIケーブル」という名称が定められたのである。

Ultra High Speed HDMIケーブルのロゴ
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 ただ,HDMI 2.0対応のHigh Speed PremiumケーブルとHDMI 2.1対応のUltra High Speedケーブルで,どちらが上位なのか慣れないうちはピンと来にくいので,市場ではちょっとした混乱が生じるかもしれない。


HDMI 2.1時代のケーブルはパッシブかアクティブか?


 さて,4K対応テレビやディスプレイが普及期にある現在,前述したとおり,HDMI 2.0対応機器で既存のHDMIケーブルが使えないことがあるという問題が起きているわけだ。2019年には,この問題にHDMI 2.1対応機器が加わるわけで,HDMIケーブルが使える/使えないという問題がさらに拡大するだろう。

アクティブHDMIケーブルのメーカーの1つであるLB Lusemが,HDMI LAブース内でケーブルを披露
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 そこでHDMIフォーラムでは,この状況に対処するために「4Kや8Kを伝送するケーブルには,アクティブHDMIケーブルを使いましょう」というアピールを行っており,CES 2019におけるHDMI LAブースでも,ケーブルメーカーがそうした展示を行っていた。

FIBBR Technologies(以下,FIBBR)やElka International(以下,Elka)といったケーブルメーカーも,HDMI LAブースでアクティブHDMIケーブルをアピールしていた
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 アクティブHDMIケーブルとは,HDMI端子内にイコライザチップを内蔵して,受け取った電気信号を電気的に増幅して伝送したり,あるいは光信号に変換してから伝送するケーブルのことだ。超広帯域幅のデータ伝送を行うHDMI 2.1の信号をケーブル側で補正することで,確実な伝送を実現できるのがアクティブHDMIケーブルの強みである。
 ちなみに,イコライザチップを駆動する電力は,HDMI端子から供給される5Vの電源ラインを使うケーブルが主流だが,ケーブル長の長いアクティブHDMIケーブルでは,それ以外の手段――たとえばHDMI端子部に装備した電源用のUSB Micro-B端子経由――で電力を供給するタイプも存在する。

Johnson Components and Equipments(JCE)は,HDMI 2.1の48Gbps伝送に対応するパッシブHDMIケーブル(写真左側の2本)を出展
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 一方,パッシブHDMIケーブルというものもあり,これはHDMI端子を銅線で結んだ,ごく普通のHDMIケーブルのことだ。パッシブHDMIケーブルでも,HDMI 2.1の信号を伝送できないわけではなく,実際,会場でもHDMI 2.1対応のパッシブHDMIケーブルが出展されていた。

 HDMI LAがアクティブHDMIケーブルをアピールするというのは,実はかなり異例なことだ。というのも,HDMIフォーラムでは最近まで,アクティブHDMIケーブルの存在についてはほぼ見て見ぬ振りをしていたのである。機器側が装備するHDMI入力端子に送られてくる電気信号はHDMIフォーラムの管轄だが,その信号をパッシブケーブルで送ろうがアクティブケーブルで送ろうが,関知せずという立場を取ってきたからだ。

 アクティブHDMIケーブルのメーカー担当者に話を聞くと,現在のアクティブHDMIケーブル製品は,内部構造がパッシブHDMIケーブルと比べて複雑なので価格は高めになっているが,HDMI 2.1の利用が始まる2019年以降になるとニーズが高まるだろうから,量産効果と価格競争が激化することで一般ユーザーにとっても身近な存在になっていくと予想しているとのことだった。

 HDMI 2.1時代はアクティブHDMIケーブルが無視できない存在となっていくだろうということは理解できる。しかし,ゲーマーからすれば,パッシブHDMIケーブルとアクティブHDMIケーブルのどちらをどういうときに使い分ければいいのか,イメージしにくいだろう。
 ケーブル専門企業Elkaのコーナーでは,この疑問に対するHDMIケーブルメーカーらしい指針をパネルにまとめていた。それによると,HDMI 2.0用の場合,ケーブル長15m未満まではカテゴリ2のパッシブHDMIケーブルで対応できるが,それ以上はアクティブHDMIケーブルが必要になってくるという。HDMI 2.1用は一層条件が厳しくなり,カテゴリ3のパッシブHDMIケーブルで対応できるのはわずか3m未満まで。それ以上の長さはアクティブHDMIケーブルが必要になるそうだ。

HDMI 2.0およびHDMI 2.1において,何mまでならパッシブHDMIケーブルが使えて,何m以上はアクティブHDMIケーブルが必要になるかを示したパネル。なお,この目安はHDMIフォーラムが規格化したものではなく,Elkaが経験則にもとづいてまとめたものだ
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光ファイバーを用いたLB Lusem製HDMI 2.1対応アクティブHDMIケーブル。写真右側のケーブルは,配管を通しやすいように,ケーブル本体側の端子として幅が狭いHDMI Micro-D端子を採用したものだ
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 このパネルにある「Active Optical Cable」とは,アクティブHDMIケーブルのなかでも,伝送安定性に優れる光ファイバーを用いたアクティブHDMIケーブル(以下,光ファイバーHDMIケーブル)のこと。Elkaでは,HDMI 2.0用では25m以上,HDMI 2.1用では5m以上で光ファイバーHDMIケーブルを推奨しているようだ。

左はElka,右はSilicon LineのHDMI 2.1対応光ファイバーHDMIケーブル
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2種類ある光ファイバーHDMIケーブル

性能は優れるが分かりにくさも


Elka製の48Gbps対応パッシブ型HDMIケーブル。Elkaはカテゴリ3のパッシブ型HDMIケーブルは最大3mまでで,それ以上はアクティブHDMIケーブルのみを製品化するそうだ
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 光ファイバーHDMIケーブルの展示を行っていたLB Lusemと,FIBBRの担当者は,異口同音に「HDMI 2.1時代におけるアクティブHDMIケーブルの主流は,電気信号を増幅する銅線タイプではなく,光ファイバーHDMIケーブルとなるだろう」と述べていた。部材コストの関係で,光ファイバータイプのアクティブHDMIケーブルは銅線タイプよりも高価になるのだが,Elkaのパネルにもあったように,銅線タイプのアクティブHDMIケーブルでも,対応できる長さは短いと考えられているからだ。

 Elkaのパネルでは,銅線のアクティブHDMIケーブルによって対応できるのは5m程度で,それ以上は光ファイバーHDMIケーブルが必要になるとあった。一般家庭ではレアケースかもしれないが,離れた機器同士をHDMIケーブルで結ぶとき,5m程度を超えてしまうことはあるし,リビングサイズの部屋となれば,10mが必要なケースも出てくるだろう。HDMI 2.1用に光ファイバーHDMIケーブルが必要となる場面は増えそうだ。

 それに加えてLB LusemやFIBBRの担当者たちは,「光ファイバーHDMIケーブルに限ったことではないが,アクティブHDMIケーブルは使用する向きが決まっていることを啓蒙するのが難しそうだ」と述べていたのが印象的だった。アクティブHDMIケーブルでは,ケーブル両端にあるHDMI端子に組み込まれたイコライザチップの役割がそれぞれ異なるためだ。
 銅線型アクティブHDMIケーブルのソース側(映像を送出する機器につなげる側)端子には,電気信号を増幅する機能を持ったイコライザチップが組み込まれている。同様に,光ファイバーHDMIケーブルでは,ソース側の端子に電気信号を光信号に変換するイコライザチップが組み込まれている。しかし,ソース側の端子をテレビやディスプレイのHDMI入力端子に差し込んでしまうと,向きが逆になるのでHDMI信号を送れなくなってしまう。接続する向きなど関係ないパッシブHDMIケーブルとは,異なる使い方がユーザーにも求められるわけだ。

FIBBR製のHDMI 2.1対応の光ファイバーHDMIケーブルは,ソース側の端子に三角形のアイコンが(左),ディスプレイ側の端子にはテレビのようなアイコンが描かれている(右)。ソース側の端子をテレビに差し込んでも,映像は伝送できない
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FIBBR製ハイブリッド型光ファイバーHDMIケーブルの端子部を拡大したところ。FIBBRのハイブリッド型ケーブルは,端子の根本がシースルーとなっており,銅線(赤色や緑色の線)と光ファイバーが通っていることを目で確認できる
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 また彼らは,光ファイバーHDMIケーブルには2種類あり,予算や必要とする長さに応じて選択する必要があるとも述べていた。
 まず1つは,主要信号を光ファイバーで伝送しつつ,一部の信号は銅線で送るハイブリッドタイプだ。銅線で送るのは,HDCPやEDIDといったデータをやりとりする双方向通信用のDisplay Data Channel(DDC)など。こうしたデータ通信は,映像ほど広帯域幅が必要なわけではないので,銅線のままでいい。高価な光ファイバーの線数を減らせるので,製品を比較的安価にするのにも効くわけだ。現在,光ファイバーHDMIケーブルとして市販されているほぼすべての製品がこのハイブリッドタイプであり,一般消費者向けの光ファイバーHDMIケーブルは,こちらが主流になるだろうとの話だった。

 2つめは,すべての信号を光ファイバーで伝送するタイプだ。こちらは,銅線だけでは電気信号の減衰が避けられないほどの長尺HDMIケーブルが必要な局面で使われるだろう。それ以外にも,電磁的ノイズを徹底的に排除したい医療現場や,映画制作スタジオのようなプロフェッショナルな制作現場向けにニーズが高いと見込んでいるようだ。

Inneos製のHDMI 2.1対応延長アダプター
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 余談気味だが,今回のHDMI LAブースに,光ファイバーだけですべての信号を伝送するアクティブHDMIケーブルの展示はない。その代わりというわけではないが,伝送系を光ファイバーのみで実装したInneos製のHDMI 2.1対応延長アダプター(エクステンダ)が展示されていた。HDMI 2.1時代では銅線の延長ケーブルが提供される見込みは薄く,ケーブルを延長したい場合には,こうした延長アダプターを使う必要がある。こうした延長アダプターにも向きがあり,その間を光ファイバーで結ぶことになる。

 「2019年のHDMI LAブースは,HDMIケーブルだらけだろうな」と予想していた筆者は,正直,展示内容にあまり期待はしていなかった。ところが,ブースで話を聞いてみたところ,HDMI 2.1時代を迎えるとHDMIケーブルが最もトラブルを誘発しやすい要素になることが分かり,かなり勉強になった次第だ。
 現在はまだ,8K映像やHDMI 2.1に触れる機会のあるユーザーが限定的なので,本稿で示した問題点を身近に感じることはないだろう。しかし,「HDMI 2.1時代は,ケーブルの種類や使い方に注意する必要がある」ということを,頭の片隅に置いておくと,遠くない将来に役立つこともあるかと思う。

HDMI LAブースの「Variable Refresh Rate」(VRR)技術展示コーナー。VRRはHDMI 2.1における新機能のひとつで,可変フレームレート対応のディスプレイ同期技術である。事実上,AMDの「FreeSync」に相当する技術で,それがHDMI 2.1に統合されたわけだ。展示では,Xbox One XがVRR対応であることをアピールしていたが,実際にはFreeSyncで動作しているだけである
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HDMI 2.1における48Gbps 8K伝送と「eARC」(Enhanced Audio Return Channel)のデモコーナー。従来のHDMIにもあった「ARC」のビットレート上限を引き上げたものがeARCで,HDMI 2.1における新機能の1つだ。48Gbps伝送にはINVECAS製のHDMI 2.1対応インタフェースチップ「INV4781」(リピーター),「INV4788」(トランスミッタ),「INV4789」(レシーバー)を使った評価基板を用いていた
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HDMI公式Webサイト(英語)


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